序章 狂イノ世

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その光景を少し離れた位置、崖の上から見ている人物がいた。 白髪で長髪の、若い男だ。 暫く目下の光景を、何の感情も無い眼でみていたが、やがて興味を失ったかの様にその場を立ち去った。 彼が去った後、彼が見ていた場所には原形を留めぬ異形の死体がただ残されているだけだった。 だが、その光景を見ている人物はもう一人いた。 焦げ茶色の髪をした、短髪の青年だった。 先程までの光景をまるで心踊る遊戯でも見ている時のような、面白くて堪らないといった表情で見ていた。 そして、人を襲っていた異形が突然ばらばらになって散ると、一瞬驚きを顕にしたが、すぐ先程よりも楽しそうに笑い出し、あっという間に爆笑へとかわった。 「面白い、まだこの私を愉しませてくれるモノがいるのか・・・!!」 彼はひとしきり笑うと、周囲に潜んでいた異形と共に姿を消した。
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