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ふと周りを見回すと、ホームのスタッフ以外にも見知った顔ぶれがあった。前の職場、保育園の先生方と子供たちだ。大勢の園児がいたが、泣いている子を見なかったように思う。ただ大人ばかりが泣いていた。
すべての事にお構い無しに雪はどんどん降り積もる。下の駐車場からブルーシートが運ばれたので、一時的に雪をしのげるように皆に覆い被せる。役場の人たちも指示する人がいないらしく、手間取っている。
利用者たちをともかくブルーシートの下に入れて、私やスタッフや他の町の人びとは周りを持ち上げていた。
他に何をする事もできなくて、ただ
「こんな時に雪なんか降らさなくても……三月だっていうのに。暖かい日ならここまで酷い気持ちにもならなかったろうに」
とぼんやり空を眺めて思った。
ブルーシートに入りに来た男性が
「こんな時に雪なんか……」
と言った。みんな同じ気持ちなのだ。
津波の脅威が去ったわけでなく、余震はまだ続いていたけれど、このまま雪の中にいるよりはマシだということで役場内に避難することになった。
室内にもブルーシートが敷かれ、次々に人が入っていく。
窓ガラス越しに町を見ていた人の一言がその時の私たちのすべてをあらわしていた。
「ねぐなった……(無くなった)」
みんなねぐなった。
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