3月11日、14時

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 雪をしのげて一息つくと、今度は家族が心配になってくる。あちらこちらで 「うちは大丈夫かしら……」 「小、中学校の子供たちは無事だって!」 「○○さん来てない!? いない!?」 等々の声が聞こえる。  私たちのホームでは利用者は全員避難できた。しかしスタッフの一人とケアマネージャーの姿がない。 「○○さんは最後に利用者さんの服を取りにいって、ケアマネもついていったはずだけど……」 スタッフは皆口ごもった。  そして当然自分の家族も気になる。ウチは家を出た時に父が戻っていた。あの後津波が来るまではそこそこ時間があった。逃げられているはず。そう言えば兄はあの時どこにいたのだろう? ……大丈夫。たぶん、大丈夫。  確信できる理由なんて何一つないけれども、そう思うしかなかった。  その後はただじっとしているしかない時間が続く。そうしているとイヤな考えになりそうになる。しかし私は頭の中でスイッチを切ることにした。ネガティブになりそうになるととにかく別のことを考えるのだ。ネガティブがアイデンティティーのような私にとって、とても珍しいことだ。しかしこれはもしネガティブに陥ったら本当に死にかねないという時の、精神のギリギリの抵抗だったのかもしれない。
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