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ああ、またかよ。そんな思いでいた。
地面が揺れだす。最初はそんなに慌てなかった。宮城は地震が多いのだ。震度3くらいならいつものことである。
しかし揺れは激しくなる。これは、大きい。部屋を仕切っている戸が私の上に倒れてきた。たいして重い戸ではないのでケガはないが、これほどの揺れは初めてで私はさすがに動揺しだした。
「ついにきたのか、宮城県沖地震が!」
昭和53年の宮城県沖地震以降、宮城県民は大きめの地震がくるとすぐ「宮城県沖地震の再来か」という発想になるのが通例である。それは何度もはずれてきたのだが、今度こそは間違いないと思った。
揺れはまだまだ止まらない。しかし少し小さくなった。職場の決まりで、こういう災害時には家のことは何を置いても駆けつけなければならないことになっている。
私はこの時まだ寝間着(長袖のロングTシャツ)と下着のみだったが、着替える間もない。とりあえず手近にあったセーターをひっかぶってかばんに携帯を放り込み、部屋のある二階から降りていった。階段の壁に亀裂が入っている。あーあ、まあでも崩れなかっただけましか……。
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