図書館の怪老人

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淡い光だけの世界。 芽依美の姿も光の一つでしかない。 自意識を保つのには、芽依美のような魔術師、魔力で自分を認識できる者でしかこの場所では正気を保ってはいられなかった。 芽依美は自らの魔力の源泉を探し出した。 そして、遥の魔力も探し出し、その源泉の量に驚きながらも、再び意識を上昇し始めた。 今まで落ちてきた道を、現実世界へと登って行く。 高く、 高く、 さらに高く。 光はやがて、芽依美の姿を取り戻し、その身体には、天女を思わせる衣のような魔力を纏っていた。 現実世界では、この間、ほんの、五回程呼吸をした時間しか経過していない。 瞑想から意識を覚醒させた芽依美は、文亮の顔を見た。 「ただいま」 文亮は、芽依美の瞳に宿る膨大な魔力を感じた。 そして、 「おかえり」 と、だけ言った。
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