図書館の怪老人

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三人の声はやがてハーモニーとなり、芽依美の魔力を更に向上させた。 原始魔術の歌と踊りによる祈りにも似たその歌声で、教室は魔力の幕に包まれ、地球の引力に導かれるまま、光となってラヴクラフト学園の敷地内、一階の廊下のあるべき場所に、無事帰還した。 「……やったな」 大きな振動もなく、地上に戻った教室内には、浮遊から解放されたクラスメートが床に倒れてはいたが、皆怪我を負ってはいないのを確認し、文亮は安堵の溜め息を付いた。 「……なんとか、ね」 重力がある事に嬉しさが込み上げて、涙が出そうになるのを堪えながら、芽依美は頷いた。 「もう、二度と宇宙はイヤ」 芽依美と一緒に、文亮は笑う。 遥も意識を取り戻し、芽依美の腕の中で微かに微笑んだ。 「良かった……」
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