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「ふうん……戻ってきたんだ」
薄暗く広い空間を歩いていた来栖は、独り言を行った。
教室が学園に戻ったのを魔力で知ったのだ。
「彼らも、力を付けている。そういう事でしょう」
傍らにいる大男が言った。
「彼女の覚醒は、もうすぐでしょう。バステートに頼る程でも無かったのでは?」
ゆったりとした修道服を着た大男の言葉に、来栖は首を振った。
「僕じゃない。……“あのお方”の計画だよ。……計画に狂いなど無いはずさ」
大男は恐縮した風に何かを呟いた。
「……大丈夫だよ。“呪詛払い”をしなくても。悪口くらいで“あのお方”が機嫌を損ねることは無い」
来栖はそう言ったが、この修道服の大男に未来は無いことも知っていた。
「もうすぐ。もうすぐだよ」
来栖は暗く、じめじめした纏わりつく空気の空間を下っていく。
人工的な、それでいて人工的物ではない物質のトンネルが、螺旋状に下へ下へと続いていた。
「……もうすぐ、目覚めるのか……」
来栖の持つ円筒形の箱の中で、アーミティッジ博士も感じていた。
その空間の底に眠る、その存在を。
「まさか……こんな場所に、来てるとは……」
そこは、ラヴクラフト学園の地下数百メートル。
そこに、紛れもない、かの太古の存在が、南太平洋の深海から引き揚げられていた。
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