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助けが欲しい時に、助けは来ないものだ。
全てが片付いた後、更に完全に片付ける為に彼らはやってくる。
教室内を不快な音を出しながら移動する甲殻類の怪物を眺めながら、文亮は恨めしく思った。
「ホント、文亮の“お友達”には感謝するわ」
芽依美は意地悪く言った。
「この人数をアタシ達だけで洗脳しようとしたら大変だもの」
芽依美はウィンクしてみせた。
遥は、この異様な生物がクラスメート全員に洗脳を施しているのを特に何の感情もなく眺めていた。
この怪物が、文亮君を改造したんだ。
そんな事しか思っていなかった。
「……変だな」
文亮は教室を見渡した。
これだけの騒ぎなら、学園の警備員が来ても、おかしくはない。
いや、むしろ計画を邪魔されたのなら、教室が帰還するのを待ち構えていても不思議ではない。
その警備員、UFO事件を無かった事にする為にあらゆる手段を使う“メン・イン・ブラック”のような彼らの姿は、漸く洗脳が終了した後、変容した田中の遺体を回収する時だけ現れた。
「よお!いつもご苦労様」
文亮の軽口にも目もくれず、簡素な遺体袋に田中の遺体を詰め込むと、彼らはすぐに教室を去った。
「……相変わらず、愛想のねー連中だ」
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