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「よお、田中」
テストが終わり、帰り支度をする田中に文亮が声をかけた。
「なんですか?文亮クン」
爽やかな笑顔で田中が答える。
「ねえ、田中くーん。早く帰ろー」
「ああ、ちょっと待ってて」
怪物となって死んだ前の田中とは違い、新しい田中はイケメンだ。
出入り口には女子が数人、田中と帰る為に集まっている。
「はッ……これは前の田中と大違いだな」
文亮は新しい田中を鼻で笑ったが、田中は気にしていないようだった。
「これが、今の僕なんでね」
小声で田中が言う。
「挑発は無駄ですよ。今は、僕が田中ですから」
「ずいぶんと洒落た真似するな、“来栖”」
文亮はイケメン長身の田中に言った。
「誰かの精神を乗っ取ったか?それとも身体を取り替える魔法でも使ったのか?」
“来栖”と呼ばれた田中は、ワザと驚いた顔をした後、笑った。
「流石は、探索者の文亮クンですね。僕だと気が付きましたか」
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