魔道書

5/35
前へ
/231ページ
次へ
「よお、田中」 テストが終わり、帰り支度をする田中に文亮が声をかけた。 「なんですか?文亮クン」 爽やかな笑顔で田中が答える。 「ねえ、田中くーん。早く帰ろー」 「ああ、ちょっと待ってて」 怪物となって死んだ前の田中とは違い、新しい田中はイケメンだ。 出入り口には女子が数人、田中と帰る為に集まっている。 「はッ……これは前の田中と大違いだな」 文亮は新しい田中を鼻で笑ったが、田中は気にしていないようだった。 「これが、今の僕なんでね」 小声で田中が言う。 「挑発は無駄ですよ。今は、僕が田中ですから」 「ずいぶんと洒落た真似するな、“来栖”」 文亮はイケメン長身の田中に言った。 「誰かの精神を乗っ取ったか?それとも身体を取り替える魔法でも使ったのか?」 “来栖”と呼ばれた田中は、ワザと驚いた顔をした後、笑った。 「流石は、探索者の文亮クンですね。僕だと気が付きましたか」
/231ページ

最初のコメントを投稿しよう!

98人が本棚に入れています
本棚に追加