魔道書

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「さて、博士が我が教団に落ち、巫女が覚醒した。次なる手は?」 男子生徒の表情が少しだけほぐれた。 「はッ。巫女たる器、凪遥に魔導書を読ませ、さらなる段階に至らせることかと」 もう1人の顧問が上転して白眼を剥いた眼を向けながら話す。 「そうだな。」 男子生徒は頷いた。 「過日のジェフリーの赤い本を斜め読みしただけで、黒い柱を幻視したと聞いた。今度のテストに紛れ込ませたイェブスの呪文も、ケフネスの聖油なしであの魔力を得た。さて次なるは……」 「昨年同様、ドジアンの書が宜しいかと」 脂汗をハンカチで拭きながら来栖が答えた。 「前の器、日菜子ではヨグ・ソトースを召喚しました故」 「あれには、驚かされた」 男子生徒の頬が仄かに紅潮した。 「あの“神隠しの子”の邪魔がなければ、あの一帯にヨグ・ソトースの脅威を及ぼすことが出来た」 「ノア様。しかし……あの時に、エージェント1人が……」 チャラい感じの生徒がそれを阻止したのにはもう1人、芽依美の存在があったことを思い出させた。 嫌な事を思い出したものだと、来栖はその生徒に【ヨグ・ソトースの拳】を打ち込みたい衝動に駆られた。
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