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参加者達は相談し、男性であり身軽な黒っぽい髪の男性(私…つまり金髪男性より小柄だった)をまず押し上げる事にした。
「よし、いいぞ。」「もう少し!」「おい、もっと力を入れろ!」
そんな掛け声が響かせ、足場をガタガタさせながら、もうすぐ届くか…といったところで、再び声がした。
「勝手な事をされちゃ困りますよ。」
司会者だ。
全員の動きが止まる。
「う…うるせー!」
黒っぽい髪の男が、吹き抜けに向けた手をプルプルと震わせている。
1cmで天井に届く。そんな距離であった。
「今すぐ戻りなさい。この部屋すべてのものが、あの人のようになりますよ。」
全員が、今は何もない小部屋を見た。
あのオバサンがいた部屋だ。
ブン、と何か高圧電源が入るような音がした。そしてコォォオオ…とダクトの排気音。
「今すぐ戻りなさい。このフロア全てを、同じシステムで灼く事ができるんですよ。」
再度言われ、誰が言うでもなくズルズルと黒っぽい髪の男が降りてきた。
男自身ももう登る気がなかったし、誰も押し上げようとしなかった。できなかった。
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