中山道

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全てに目を通し終わると、土方は再び大きくため息を吐いた。 「足りない部屋数は、あと4つだな。後続の組の分にも抜けがある」 「あと、部屋割りを少し変えた方がいいかもしれませんね。そろそろ問題が起こりそうな所がいくつか・・・」 伝通院をたってから今日で三日になる。 そもそも、血の気の多い男達の寄せ集め集団で揉め事が何も起こらない方がおかしい。 小さな小競り合い程度は、すでに彼方此方で起き始めていた。 「山南さん、日没まであとどれくらいかわかるか?」 「そうですね、あと半刻とちょっとというでしょうね」 「まぁ、あいつらももう来るだろうし、この顔ぶれならなんとかできそうだな。」 土方が集まっている仲間達を見回すと満足げな笑みを浮かべて言った。 土方と山南の二人の間だけで、どんどんと話が進んでいく。 それがいつもの形なのか、他の仲間達は完全に二人に任せているようだった。 琴もしばらく大人しくやりとりを見守っていたが、土方と山南との間で進んでいくやりとりにふと疑問を感じ、言葉を漏らした。 「でも、先程の近藤さんの話だと宿場の宿はもうどこもいっぱいだったとか」 「あぁ、もうどこも満室でこれ以上は見つからなかったぞ。」 近藤が琴の言葉に同意する。 近藤達は実際に、宿場のほとんどの宿に足を運んで頼んだが、空いている部屋は少なく、部屋の確保はなかなか難しかった。 多くの宿に断わられる中、なんとか直前で予定の数を確保出来た形だった。 それでも、実際は芹沢達の部屋が足りていなかったのだが…… しかし、土方は二人の言葉を気にする事もなく、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。 「そりゃ、普通に頼んでも無理かもしれねぇが、空けさせる方法はいくらでもあんだろ。」 土方の言葉に琴は嫌な予想が浮かび、眉を顰めた。 まさか、力づくで空けさせる気なのだろうか。 だとしたら止めるべきか、関わらない様にするべきか。 すぐには決断出来ない程度に琴は、この試衛館の面々と既に関わってしまっていた。
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