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「あ……ありがとう御座います!」
と、母親が言った。
「ほ~ら、なんて言うの?」
「あ……ありがとう」
母親に促され、少女もおどおどとお礼を言う。
「ど~いたしまして」
「本当にありがとう御座います。特殊能力者の方ですよね?」
「そですよ。今日からこの地区の、F学園に学園替えしたんです」
母親の問いに、快く答える。
地区によっては、特殊能力者は差別されるが、この街ではそんな事はない。
「あら、そうですか。それじゃ、お引き留めしたら悪いわね」
「いえいえ」
「それでは、頑張って下さいね」
「ありがとう御座いま~す。じゃね、ばいば~い」
ミウが母親に会釈し、少女に手を振ると、少女も可愛らしく手を振り返してくれた。
そしてミウは、2人の脇を抜け、鞄を拾い、再び学園へと歩き出す。
今の大ジャンプを見た周囲の人々が、口々にミウや、特殊能力者の噂をしているのを、聞き流しながら。
「……あの子、特殊能力者か~。可愛いな……」
「……ああ、今日から学園、始まるのね……」
「……おい、聞いたか?この地区に、黒い翼の女神が学園替えしたらしいぜ?」
「マジで!? あのむちゃくちゃ美人って噂の!? あの子も可愛いけど、違うのかな?」
「死神猫も来てるっていうから、そっちじゃないか?」
「あ~、かも。死神猫も、物騒な通り名だけど、めちゃくちゃ可愛いらしいしな……」
「……ね、今度の特殊能力者の中に、D地区から来てる人が、2人居るんだって」
「マジ!?」
「知り合いが、形を変えし者と銀髪の魔女を見たって……」
「……ソーマ流剣士が来てんだろ? 俺、型だけでも教わりたいな……」
「……ね、アンティア家が居るって本当!? 本物の貴族なんでしょ!?」
「一般庶民見下してるとこまで本物らしいけど……」
「……月光の乙女が来たんだって」
「うそ~! 月の光を魔法に変えるって女の子だよね! なんかロマンチックだよね~……」
(……なる程~。色んな人が居て、色々通り名ついてるんだね~。
にしても、ミウは死神猫か……。ま、武器が武器だから仕方ないかな)
ミウは鼻で笑い、歩き続けた。
もうすぐ、学園が見えてくる筈だ。
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