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大きな門に、白い建物。
決して巨大建造物ではないが、それでも、学園が放つ威圧感は凄まじい。
まるで、この敷地に1歩でも踏み込むと、別世界が広がって居るようだ。
これが、常識からかけ離れた人類、特殊能力者を集める、学園独特の空気なのだ。
長期休みでしばらく学園から離れていると、再び来たときに、毎度毎度この威圧感に驚く。
ミウは腹に力を込め、いざ、足を踏み入れる。
そして少し歩き、まず何処へ向かうべきか迷い始めた時、不意に声を掛けられた。
「新12年生の方ですか?」
見ると、スーツを着た男性。
胸元の花飾りが、お祝いムードを醸し出していた。
「あ、はい、そうです!」
「生徒手帳はお持ちで?」
「はいは~い」
男に促され、ミウは鞄から生徒手帳を出すと、男に確認させる。
ここで仕事をしているということは、この男も特殊能力者なのだろうか。
「……はい、確認しました。朝風ミウさんですね。ようこそF学園へ。
ここを真っ直ぐ行って、講堂に向かって下さい。青い屋根の建物です」
「了解~」
男から返された手帳を受け取り、ミウは指示された方向へと向かう。
青い屋根の建物。
それは、角を1つ曲がった先に、すぐ現れた。
そして、もう1つ気付く。
講堂の前に、自分と同じ制服を着た女性が立っていた。
「あ……」
その女性の容姿を見た途端、ミウの心は高鳴る。
細く、スラリと長い手足に、小さな頭は、モデルの様に8頭身。
肌は透き通る様に白く、講堂を見上げるその横顔も、CGではないかという程に美しい、美し過ぎる。
そして、最大の特徴的な、鴉の濡れ羽色の、腿まで届く長いポニーテールの髪。
間違いない。
「ヴィヴィだーっ!!!」
「!!?」
不意に呼ばれた彼女、ヴィヴィは、驚いてこちらを見た。
「あれ……キャット!?」
容姿に違わぬ、透き通る美しい声に、久々に呼ばれた渾名。
見知った人物が居た事に、込み上げる喜びが抑えられなかった。
「にゃ~っ!! ひ~さ~し~ぶ~り~っ!! ヴィヴィ~っ!!」
居ても立ってもいられず、ミウは彼女に駆け寄り、飛び付いた。
「あっ……やっ! ちょっと、危ないわよ、キャット~。貴女もF学園なの?」
「うんうんうんうんっ!! ヴィヴィだ~ヴィヴィだぁ~! わ~い!!」
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