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気が付けば、俺は白い空間に寝かされていた。壁も天井もベッドも何もかも、全てが白く、窓から射す日が、虚しいぐらいに眩しかった。ゆらゆらとカーテンが揺れる。生温い風が頬を撫でる。仄かに薬品の匂いがした、ような気がした。
視界がぼやける。首が回らない、腕も足も腰も何もかも動かない。頭が痛い、腕が足が背中が痛い、全身が熱い。まだ、寝ぼけているのだろうか。
不意に声が聞こえた。澄んだ、やや低めの声。聞き慣れないようで、1番聞き慣れた、大嫌いだけど好きな声。だけど、いつものような凛とした声ではなく、どことなく弱々しい、僅かに震えた声だった。
「けっして絶望してはならない。もし絶望したら、そのときは死に物狂いで働けばいい」
ゆっくりと声の主へと視線を向ける。ほんとは身体ごと向けてやりたいが、身体が動かない。まだ少しぼやけた視界の中でアイツは、桐生は震えているような気がした。
しばらくして、桐生は小さな声で「バーク」と呟いた。視界が少しクリアになる。どうやらさっきの台詞はバークという人の言葉らしい。相変わらず訳のわからない奴だ。
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