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ありさも交えて、しばらく雑談をする。すると、チャイムが鳴り、担任が教室に入ってくる。ふと、思い出したように校庭を見るが、既にアイツの姿は無く、先程と変わらず桜の花びらが舞っているだけだった。
「陽ちゃーん、今日転入生おるんじゃろー?」
お調子者の竹内の質問に答えることもなく、カツカツとリズムよく黒板に文字を書く。"桐生 凛"と書き終えると、担任である陽ちゃんは満足げに笑う。
「よーし、お前ら期待しとけよ!お前らには勿体ないぐらいの奴じゃけ」
陽ちゃんはケラケラと笑いながら、教室の扉を開ける。するとそこには、先程見たばかりのアイツが立っていた。
陽ちゃんに背中を押され、教壇に上がる。すると、女子たちはキャーキャー騒ぎ出し、男子は男子で格好いいだの背が高いだのと話し出す。
「桐生 凛です。東京から来ました」
澄んだ声。やや低いものの、名前の通り、凛とした声。180cmはありそうな身長。そのくせ全体的に華奢で、威圧感はない。ただ、伸びすぎたアシンメトリーな前髪が、邪魔くさく見えた。
「やっぱり大人っぽい子じゃね、」
同じ高2には見えん、そう呟く亮の声が聞こえ、桐生をぼんやり眺める。不意に桐生と目が合い、慌てて目を逸らす。そのまま、校庭を眺めれば、陽ちゃんが桐生の席を決めているのが僅かに聞こえてきた。
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