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俺は顔を若干右に傾ける。
同時に感じる風圧。筋肉の砲弾が頬を掠め、横を風のように通り抜けていく。
(あ、危ねぇ……! ちょっと焦ったぜ……!)
金髪マッチョの肘が通り抜けた辺りから、先程の鬼の形相から少しの戸惑いが見え始めていたのを俺は見逃さなかった。
両手に抱えていた肉の詰まった袋を隅に投げる。
「フゥッ……!行くぜ !」
俺の両足が同時に地面を蹴り、豹如き速さで金髪マッチョの眼前まで詰め寄る。
その瞬間、俺は屈み右足でゴツい足を思い切り蹴り払う。
「ふぬ!? ……うおッ!!」
一回で倒せる程甘くはねぇ。一旦ぐらついたところを立て続けに左足が襲い掛かる。
体のバランスを失った金髪マッチョは、ぐらついて前に倒れ込もうとしていた。
その巨躯が前に倒れる寸前、寝るように待っていた俺はニヤリと微笑む。
そして両手で耳の辺りの地面を飛び上がるように押し上げ、その勢いで両脚を天に向けて突き上げた!
鈍器で殴られたような短く鈍い音が、暗い裏通りに響き渡る。
剥き出しの腹部に鉄製の底のブーツが容赦なくめり込むのが、血の上る目から通して見える。
金髪マッチョの体重も加えて大きなダメージとなっただろう。しかし蹴り上げた瞬間に若干脚を痛めたようだ。
「てめ……重てぇな! 痩せやがれ!」
いらぬ悪態をついて、これから落ちてくる巨体の下敷きになるまいと、すぐに体を回転させて脱出。
地面に激突する鈍い音と短い砂埃を立てる。
ようやく腕だけで起き上がり、目の前で立ちはだかる俺を睨み付ける金髪マッチョの粗悪な顔は、青い血管が浮き上がり苦悶の表情が現れていた。
「ふッ……ぐぁあ……! てんめぇ……!!」
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