妄想

2/4
前へ
/92ページ
次へ
「いいよ」  彼はそう言った。  それは、私にとってかなり予想外の言葉で……。  私は今、その後の対処にかなり困っていた。  金髪に近い茶色の髪はサラサラで、細身で長身。  色は白く華奢に見えるが、肩幅は広い。  黒ではないコゲ茶の大きな瞳が今、私を見つめている。 「はっ?」  私はそれに対してこんなマヌケな声を上げた。 「だから、いいよって言ったの。聞こえた?」  彼はふざけているのか?  それとも私をからかっているのか?  私は呆然とそこに立ち尽くしていた。  彼の真っ直ぐな視線が、私を貫く。 「聞こえた、かな?」  首を傾げ、髪をかき上げる。 「は……い」  硬直したままの体は立っているのがやっとで……。  それを可笑しそうに見ている彼は、スッと右手を伸ばし私のほっぺたに触れた。 「固まり過ぎ」  そう言った彼の顔は、今まで見た中で一番素敵な笑顔だった。 と、ここまで書いたところで、私はペンを止めた。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

124人が本棚に入れています
本棚に追加