124人が本棚に入れています
本棚に追加
私は無事、1年2組の教室まで運ばれた。
ご丁寧に教室の扉の中まで入れてくれた。
「はい、到着」
そう言ってから、彼は初めて私の手を離した。
右手が急に淋しくなった気がした。
温もりを逃したくなくて、私は右手をそのままグウに握った。
「ありがとうございました」
私の声は、相変わらず小さい。
「どういたしまして」
その顔をまともに見たら、赤面してしまいそうで……。
否、もう赤面はしちゃってるんだけど。
とにかく私は、やや俯いたまま頭を下げた。
その頭を
「もう迷っちゃダメだよ」
と言って、軽くぽんぽんと叩く。
恥ずかしくて顔が上げられない。
「じゃ、またどっかで」
彼はそう言うと、最後に優しく私の頭を撫でて去って行った。
最初のコメントを投稿しよう!