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このお話は戦国時代のこと。ある村に、与助という男の子がいた。彼は産まれつき真っ赤な肌で、頭には二本の小さな角のようなものがあった。
人々は彼を鬼、鬼人、化け物、と恐れ近づかず、差別をした。さらには、親までも気味わるがりついには、捨てられてしまった。
与助は悲しかった。…しかし、一人で生きてゆくため必死に田畑を耕し、働いていた。
そんなある日…
(トントン)
夜遅く、家の扉を叩く人がいた。
「客か…珍しいな。しかし、こんな時間に誰が?」
扉を開けるとそこには、村の娘が一人立っていた。娘はひどく酒に酔っているようで、おぼつかない足取りであった。
「すみませんが水を一杯いただき―」
と言いかけた娘の目がいきなりカッと開いた。
「あ…ここは…嘘、人喰い鬼の住んでいる家…だった。よりによって私…」
娘は出てきたのが与助だと気づくと、恐怖に怯えた顔を浮かべた。
「鬼…あんたなんて…人じゃない、鬼よ鬼!早くこの村から出ていけ、死ね!」
娘は声を震わせながら絞り出すように言い放った。
それを聞いた与助の中で、何かが音をたてて崩れ去ったように感じた。
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