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作業開始から数十秒、コンタクトを簡単に見つけることができた。
「あったよ」
俺はコンタクトを拾い、そのまま橋本さんに渡した。
「ありがとう、神谷くん」
受け取った彼女は、満面の笑みを向けてくれる。
それに思わずドキッとしてしまう俺。
反則的に可愛く、眩しい笑顔だ。これでは学校の男どもが放っておかないのも頷ける。
「いいって、でも見つかってよかったな」
「うん! これも神谷くんのおかげだよ! ホントありがとっ」
「んじゃ、俺はこれで。気を付けて帰ってな」
「うん、じゃ私も急ぐからこれで。また明日学校で会おうね。バイバイ」
橋本さんはそう手を振って駅前通りの方に駆けていく。
途中何度か振り返っては手を振ってくれはいるが……
俺は重大なことに気がついた。
彼女は今、車の通りが多い駅前に向かっては振り返っている。
それだけならまだいいが、彼女は今コンタクトが外れて視力が低下している。
笑顔で手を振る彼女はきっと気づいていない。
迫っている車の影に!
俺は次の瞬間走り出した。
こんな時、空間移動(テレポート)の能力が使えたらこんなに慌てなかっただろう。
こういういざという時に自分の未熟さを実感する。
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