古道具屋さん

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星も月も出ていない、まっくらな夜でした。 おしじさんが、ひとり、ため息をついています。 あくる日は、リンさんのお誕生日。プレゼントしたいものがあるのに、できないのです。 それは、洋服ダンスでした。 リンさんは、古くなって着られなくなってしまった洋服をすてることができません。思い出がいっぱいつまった洋服と、さよならすると思っただけで、なみだが出てきてしまうのです。 おかげで、おしいれの中は、いつもギュウギュウ。 今、使っている洋服はもちろん、おしじさんが、リンさんとのはじめてのデートの時にはいていたジーパンや、リンさんが新婚旅行に着ていったレースのえりがかわいいスーツ、お店をひらいたときに作った、おそろいのエプロンまで、はいっているからです。 「思い出の服だけをしまっておけるタンスが、ほしいわ!」 リンさんは、もう何年も前から、おしじさんにおねだりをしていました。
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