月の声

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椅子に座って俯いてる先生の横を足早に通り過ぎて洗面所へ向かう。 何の話なんだろう… なんとなく胸騒ぎがする。 着替えが終わると扉を開け、目の合った先生を観察するように見つめ返した。 「こっち、来て…」 「………」 「…話、あるから」 洗面所を出た扉の所で、立ち尽くしたまま両手で耳をそっと塞いだ。 「いや…聞かない」 「なにも心配しなくていいから」 「じゃあ、なんでそんな顔するのっ?」 返事のない先生から目をそらすと、携帯を取って布団に入り頭まで潜った。 目を閉じながらも、先生が椅子から立って近づいて来るのがわかる。 布団を引っ張ってくる先生の力は、昼間の遊びとは違っていた。 「話、聞けよ」 「いやだって言ってるでしょ」 「……少しの間…別れて欲しいんだよ」
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