5117人が本棚に入れています
本棚に追加
部屋に戻る前…先生の顔を見る前から、すでに気付いていたのかもしれない。
今まで先生とはいろんなことがありすぎた。
繰り返し傷付いてきた心が、何かを察したのか自然と痛みだしていた。
「俺、お前の…」
「寝るから…電気消して」
部屋の電気が消え、暗くて表情も読み取れないまま先生の顔を見上げていた。
「数分前に言った自分の言葉も覚えてないの? 別れるとか忘れろとか…もう、うんざりだよ」
「…卒業までの間だから」
先生が正面に座ると上半身を起され、抱きしめようと伸ばしてきた手を払いのけた。
「あと少しだから…わかってくれよ」
「何をわかればいいの?」
暗さに目が慣れ、先生を見ているうちに忘れろと言われた時の痛ましい記憶を引き戻す。
胸が痛くて苦しい…
さっきまでの幸福感はどこに行ったの?
先生がいなければ、こんな辛い想いをすることもないのに。
心が傷付くのは、先生といるから…
でも、そんな自分の心を癒してくれているのも常に先生だった。
最初のコメントを投稿しよう!