月の声

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「突き放すことも気持ち抑えんのも俺が出来ないんだよ…」 「さっきの話は?…結婚」 「お前の気持ちを確かめないと話をしに行けないじゃん」 父を憎いと思った。 先生の言った通り、親だったら当然の問題なのかもしれない。 父に対する怒りと、先生に対する想いで気持ちは揺れ動いていた。 「大丈夫だよ、さっき約束しただろ。いなくなるわけじゃないし」 「………」 先生の言葉に、鷲掴みにされた心が突然に悲鳴を上げ、耐えがたいほどの息苦しさを覚えた。 「…なんでわかるのっ!?」 「愛してるって言っただろ…信じられないの?」 「信じても…無理なことだってあるんだよっ!」 口から出た言葉は、卒業式の日のことと高瀬に聞いた話が頭の中で重なっていた。 突然、湧きあがった恐怖に先生の胸元の服を両手で掴んで泣いた。 嗚咽で声が崩れていく… 「信じるってなにっ? 信じてるけど、どこも行かないって証拠見せてよっ! 卒業して二度と会えなかったら…どうすればいいのっ!」
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