行路

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あいつ…お父さんのことだ。 先生はお父さんの影響で教師になったのか…知らなかった。 布団の上に座ると、高瀬の話を思い出しながら静かに話を聞く。 「家に友達が来てて、もう寝ようと思ってたのに、あいつ急に来て泊めてくれって言ったんだよ。今まで一度も来たことなかったのに」 「…泊めてあげなかったの?」 「友達も嫌そうだったし、迷惑だから帰れよって追い返したら、その日からいなくなった」 先生はぬるくなった瓶ビールを無視して冷蔵庫から缶ビールを出す。 布団に戻ると枕元にビールを置き、うつ伏せのまま顔だけを向けて見上げてくる。 「次の日に気付いたんだよ。その時に雨が降ってたことも、夜中の二時だったことも。今だったら…」 「……」 「お前さ…その時、俺と一緒にいてたらどうしてた?」 一瞬、何を聞かれているのかわからなかった。 ただ、その時一緒にいた友達が女だったことに気付き、少し胸が痛んだ。 「会うの初めてだし、とりあえず…挨拶する」 「お前……やっぱりバカだな」
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