行路

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「バカ…なんで…?」 どんな言葉を期待したんだろう。 わからなかったけど…先生は嬉しそうに笑った。 「先生…さっきゴメンね。出逢わなければ良かったなんて言って…怒った?」 「怒ってないよ、俺も同じこと何回も思ったし。だけど、もう過ぎたことだろ」 先生は体の向きを変えると、両腕を引き寄せ優しく抱きしめてくれた。 「うん、でもお父さんが…」 「そんなこと別に問題じゃねぇよ」 「…え?」 「お前が変わらなかったらそれでいい」 私は、何も変わらないよ… 先生の声が初めて頼りなく感じ、何かを必要としているのなら癒してあげたかった。 先生の唇に切なく塞がれると、夜通し愛し合い裸のまま手を繋いで朝を迎えた。 息が止まりそうなほど愛してくれた。 二度と離さないと約束してくれた。 誰よりも愛してた。 だから…もし… 見失ってしまっても… また思い出せるよね? …先生?
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