行路

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バッグに着替えなどを詰め、帰る準備をしているとデジカメが目に入る。 何の役にも立っていないことに気付き、先生を部屋で待ちながらシャッターを何度か切った。 明日…学校か… 卒業までは、普通の教師と生徒の関係に戻らなければいけない… 「用意出来た? 下で待ってるから高瀬に手伝って貰って」 「わかった、先生…これお茶?」 「うん、飲めよ」 フロントに行く先生と入れ違いに高瀬が荷物を取りに部屋まで来てくれた。 ポットの蓋を開けて匂いを嗅ぎながら、忘れ物がないか部屋を見渡す。 「それは飲まない方が…私も昔に作ってもらいましたけど、相当不味いですからね。…あ、またビール盗んで…」 「飲み物の匂いがしないので止めておきます…」 高瀬は笑いながらも素早く荷物を部屋から出し、エレベーターの扉を開けてくれる。 「高瀬さん、急だったのに本当にありがとうございました」 「本当に突然で困りました。次は随分と早い予約ですし。春頃…お待ちしてますので忘れないで来てくださいね?」 「はいっ、忘れないですよ」
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