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全く困った様子を見せない高瀬の話し方に笑いが込み上げ、自然とお互いに笑顔がこぼれた。
荷物を車まで運んでくれると、高瀬は先生の元へと館内に戻っていく。
車のドアに手をかけると、後ろから声をかけられ振り向くと女将が立っていた。
「これ、遼に返しておいてもらえる?」
「え…でも…」
「自分の家に戻るのに普通お金なんていらないでしょ?」
昨日、先生が高瀬に渡していた封筒を迷いながらも無理やりに受け取るとバッグに入れた。
「渡しておきます…すごく楽しかったです、ありがとうござ…」
「遼を、ここに連れて来てくれて本当にありがとう」
「私は、なにも…」
連れて来てもらったのは私の方なのに…
返事に困り、女将の帯に視線を注ぎながらも思わず口にした言葉に顔を赤らめた。
「つ…次に来た時は…一緒に池を見たいです」
「ええ、楽しみにしてるわ」
女将は微笑んで応えてくれると、先生に何かを言って館内に戻って行った。
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