行路

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一泊って、あっという間だな… 時間的には物足りなかったけど、何かが大きく変わったような気がする。 自分にとっても先生にもすごく貴重で意味のある時間だったはず。 誰かと関わることで意識的でなくても相手の人生を変えてしまうことだってあるんだよね。 また春に先生と一緒に来るの楽しみだな。 そんな気持ちも…つかの間。 窓から外の景色を眺めていると、先生は座席に深く寄り掛かってため息をつく。 「お前さー、数学このままじゃダメだよ?」 「なによ急に…先生みたいだね」 先生の正確でもっともな指摘を、不満に思いながらも平気な顔で受け流す。 「この前の小テストの答案用紙を見た時、俺がどんな気持ちになったかわかる?」 「…わかんない」 「xの値を求めろって書いてあるのに、なんで答えがxなの? 答え書く前におかしいと思わないの?」 授業中、先生ずっと見てくるじゃん… 集中なんか出来ないし。
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