行路

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「バカすぎて何を教えたら良いのか、もう俺にはわかんねぇよ」 「教師がそんな言い方するっ? そのうち問題になるね」 「あー、お前が卒業できるか大問題だな。明日の小テスト頑張れよ」 また小テスト…? ふざけてる場合じゃない…本当に卒業できなかったら、どうしよう。 「頑張って勉強する…」 「俺、準備室にいるから。淋しかったら…わからなかったら来いよ」 「うん」 「お前の家に行く日、明日には決めて連絡するから…携帯持っといて」 家の近くの一番大きな交差点に差しかかった。 右に曲がれば、そのまま家にたどり着く。 先生は片手で右にハンドルを切りながら、左手をそっと伸ばして手を握ってきた。 「先生、私やっぱり……何でもない」 言いかけた言葉を直前で飲み込んだ。 離したくない…帰りたくない… 心の中で呟く… 『やっぱり別れたくない』 我儘の言えない今、他に行く所もなければ帰る場所もここにしかなかった。
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