5117人が本棚に入れています
本棚に追加
「バカすぎて何を教えたら良いのか、もう俺にはわかんねぇよ」
「教師がそんな言い方するっ? そのうち問題になるね」
「あー、お前が卒業できるか大問題だな。明日の小テスト頑張れよ」
また小テスト…?
ふざけてる場合じゃない…本当に卒業できなかったら、どうしよう。
「頑張って勉強する…」
「俺、準備室にいるから。淋しかったら…わからなかったら来いよ」
「うん」
「お前の家に行く日、明日には決めて連絡するから…携帯持っといて」
家の近くの一番大きな交差点に差しかかった。
右に曲がれば、そのまま家にたどり着く。
先生は片手で右にハンドルを切りながら、左手をそっと伸ばして手を握ってきた。
「先生、私やっぱり……何でもない」
言いかけた言葉を直前で飲み込んだ。
離したくない…帰りたくない…
心の中で呟く…
『やっぱり別れたくない』
我儘の言えない今、他に行く所もなければ帰る場所もここにしかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!