5117人が本棚に入れています
本棚に追加
玄関の扉に手をかけて振り返ると、先生の車が目の前を通り過ぎて行った。
先生の考えてること…
昨日の言葉を思い出す。
『車を降りた瞬間、連れ戻したくて堪らないんだよ』
だったら、もう…連れ…
「莉子、そこで何してるの? 今帰ったの?」
「え…うん。お父さん…帰ってる?」
「今日は遅いみたい」
買い物から帰って来た母に玄関を開けてもらうと、自分の部屋に行ってバッグを置いた。
点滅している携帯に気付いて開くと、先生からのメールに寂しさと同時に焦りを感じた。
Re:
テスト範囲
P82~P97
重要 P92一番下
しばらくの間、携帯を見つめて教科書を取り出すと机に座って勉強をすることにした。
卒業まで別れるって言われたけど…メールはしてもいいのかな? 電話は?
っていうより…別れる必要あるの?
お父さんに嘘つけばいいだけじゃん。
余計なことが次々と頭に浮かびながらも、夜中まで練習問題に取り掛かっていた。
最初のコメントを投稿しよう!