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まぁそれはいい。俺だって負けてはいないさ。
ファミレスまで来た俺は、トイレに向かって…
足を止める。
今日は白いワンピースにカンカン帽といった夏をイメージしたスタイルをしている。ちなみに髪は下めに縛ったツインテールだ。
つまり、どこからどうみても女の姿だ。
しかし、本当は男である俺が、女性トイレに入ればそれは犯罪にならないだろうか。
女装は好きだが心まで女ではない「男の娘」である俺は、果たしてどちらのトイレに入ればいいんだ。
ど、どうしよう。
「…あの~。入らないんですか?」
はっとして後ろを振り返る。
しまった、俺がぐだぐだ考えている間に別の奴が来ちまったか。
「あっ、ご、ごめんなさい…!」
声変わりしても大して低い声にならなかった俺は、ソプラノパートを会得して答える。
「お先、どうぞ。」
「いやぁ、でもぉ。レディファーストですから。それで俺、紳士ですから!」
れでぃふぁーすとですからぁあ?
しんしですからぁあ?
何だこの時代遅れな言葉は。外国でもあるまいし。
その男は、紺のツナギを着た若い男だった。
ボサボサの茶髪に垂れ目で、ニヘラ、とだらしなく笑っている。
ん?こいつ、どこかで…
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