♯1 「五里霧中」

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本来なら学校の1時限目が始まった時間帯だ。 だが俺は焦らずパンを焼き、食べ、公園を通り抜け、そのまま学校へと向かった。 ガラッと言う音と共に教室に入ったら先生が、 「遅いぞ! 早く座れ」 と言った。 ドアを閉めて席に着いた瞬間に終業のチャイムがなった。 休み時間中、席に座っていると… 「良かった!来てくれたんだね!」 声のする方を振り向くと幼なじみの孝人だった。 孝人は何だか嬉しそうで、目が輝いていた。 「あぁ。わりぃ!寝坊しちまってよ。」 「うん。それより、今日の放課後一緒に帰らない?」 「あぁ。いいぜ。」 キーンコーンカーンコーン 「じゃあまた放課後!」 「おぅ!」 孝人は俺の席までやって来た。 「明日は2ヶ月に1回のテストだね」 「えーっ! テスト!?」 僕はつい教室に木霊(こだま)するくらいの大声を出してしまった。 (出来れば聞きたくなかったなぁ…) 「まぁ、雅人くん落ち着いて!」 「そんなに驚くって事は余り勉強してないんだね?」 「まぁ…」 (全然やってないんだけど…) 「よし!今から僕の家で勉強しよう」 いきなり孝人は俺の右手を掴み、走り出した。 「ま…待てって」 孝人は聞く耳を持たなかった。 連れられる儘(まま)に付いてきた俺。 「お待たせ。此処(ここ)が僕の家だよ。」 「…」 大学生の一人暮らしとは全く想像が付かないくらい広い。 「どうぞ入って!」 孝人が俺の背中を押して強制的に入った。 「中も立派だな~」 俺は感心した。 「始めようか!苦手な科目は何?」 「数学。」 「分かんない所は教えてあげるよ。」 「助かる!」 数時間後… 孝人の方から切りだした。 「そろそろ11時になるから終わりにする?」 俺は背伸びをしながら答える。 「あぁ!そうだな。」 「今日はありがとう!助かった!」 孝人は家の外まで迎えに来てくれた。 「今日はありがとうな!」 「うん!また遊びにおいでよ。」 「おぅ!またな」 二人はお互いに手を振り、それぞれの居場所に帰って行った。 次回 「顔面蒼白」
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