副組長の日々

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藤堂の愚痴のような話を聞いた山崎は、一日女中になる藤堂の姿を思い浮かべてか、我慢していたものを吐き出すように腹を抱えて笑った。山崎がいる場所は屋根裏なため体を揺らすたびに屋根裏の板がガタガタと音をたてている。 「山崎君、屋根裏で体を揺らすと天井が壊れるからやめなさい」 山南のいつもの柔らかい声なのに、山南の顔からは殺気が溢れていた。山崎からは死角なために気づかずにいるがその顔を見た藤堂は先程までは山崎に対しての怒りをもっていたが、山南の殺気に恐怖を感じて体を震わせていた。 「いや、すんまへん山南さん。けど平助の女中姿があまりにも似合いすぎて、おかしくて我慢できんで…あははっ!!」 「山崎!!もうやめっ……」 藤堂の心配は的中し、山南の刀先が屋根裏から顔を覗いていた山崎の喉元に向けられていた。その山崎は顔を固めて冷や汗をかいているのを感じていた。 「山崎君、だから壊れるからと言ってるでしょ。何回も君は天井を壊しているんですから、今回もこれで壊されたら会計の大変なことになりますよ…だからやめなさい」 さすがに山崎も山南の殺気に気づきおとなしくなった。この優しさうえに怒れば誰もが恐れる『仏の副長』山南の裏の顔なのだ。 「君はそのようにして昔から天井を壊しているのですよ…今またされたらあなたに回す修理代で夕飯が少なくなるか山崎君のを無くすしかありません。さらに遥香ちゃんも住みついたから会計事情も大変なのに…」 その言葉に山南の苦悩を藤堂は感じて、山崎は自身の生活の危機を感じて顔を真っ青にしていた。
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