入浴剤でリラックス

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  「……」   和仁は、驚いて言葉が出ない。 しかし、怒りの感情ではなく、不思議な感覚に包まれた。     「ご一緒しても、よろしいですか?」   ニコリとした、その笑顔に和仁は思わずうなずいてしまった。     「では、失礼いたします」    かけ湯をし、和仁の横に入る男性。 バスタブは広いとはいえ、誰かと一緒だと、ドキドキする。     「いい気持ちですね。 よろしければ、お客様のお名前を教えていただけますか?」   「あ、和仁です。栄 和仁といいます。貴方は?」   「これは失礼をいたしました。私は、癒(いやし) くゆりと申します」   「…くゆり?」   「はい、変わった名前でしょう」   そう言って男性は、穏やかに笑った。     それから… 和仁と男性は、バスルームから出ると 再び、入浴剤が陳列された場所の前に立っていた。     「すごく気に入りました。これをください」   「ありがとうございます」      お金を払い、袋に入れてもらうと店を出る。 しかし、帰る道が判らない。すると男性が教えてくれた。      「いいですか?ここを左に行ってあの角を右に曲がってください。そうすれば、街の通りに戻れます」   「解りました。ありがとうございます」     言われたとおりに行くと、先ほどまでいた通りに出た。 しかし、和仁が振り返るとそこはなんと壁があるだけ。   「…え…なん、で…!!?」    少し怖くなったが、手には確かにビンに入った入浴剤がある。   とにかく家に帰ろうと、和仁は走り出した。
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