醒めない夢

2/5
前へ
/339ページ
次へ
“片翼”が――煌夜が死んでから、数年が経っていた。 俺は臆病風に吹かれるまま、未だ輪廻に還れずにいる。 還れないまま――俺は兄貴の右腕として、 顔も名前も知らぬ、他人に等しい両親の会社で働き続けているのだ。 高校に通いながら。 今日から春休み。 まぁ……どうせバイトですらない仕事で埋まってしまうのだろうが。 「真夜、準備できたか?」 「……あぁ。 でも専務、俺は今“煌”(アキラ)だぜ?」 「……そうだったな。 ――さぁ、煌……今日も頼むぞ?」 兄貴の、専務の言葉に、“煌”の口端が上がる。 「勿論ですよ、専務」 .
/339ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加