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“片翼”が――煌夜が死んでから、数年が経っていた。
俺は臆病風に吹かれるまま、未だ輪廻に還れずにいる。
還れないまま――俺は兄貴の右腕として、
顔も名前も知らぬ、他人に等しい両親の会社で働き続けているのだ。
高校に通いながら。
今日から春休み。
まぁ……どうせバイトですらない仕事で埋まってしまうのだろうが。
「真夜、準備できたか?」
「……あぁ。
でも専務、俺は今“煌”(アキラ)だぜ?」
「……そうだったな。
――さぁ、煌……今日も頼むぞ?」
兄貴の、専務の言葉に、“煌”の口端が上がる。
「勿論ですよ、専務」
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