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「……つまらない、な」
専務代理としての仕事は、アイツの居ない現実から逃げる手立てにはなってはくれなかった。
狐の面をデスクに置く。
白地に色彩豊かに描かれていたであろう口や髭、目、眉。
今ではもう、見る影も無い。
「嫌いだ、」
「うん、知ってるよ」
「……」
声変わり前の少年のような、どこか聞き覚えのある声に振り返る。
「君は本当に嫌い。人間も世界も――自身でさえもね」
「――だから何だ、」
「“醒めない夢”を、君は知ってる?」
一瞬俺は、自分の身体が硬直するのを感じた。
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