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私は全身で風を感じていた。
学校の屋上、そこが今、私がいる場所で、私の最後の場所だ。
スカートが捲れ上がるのを無視して、茜色に染まり始めた空を見上げた。
私は、壊れていた。
早くに両親を亡くした私は、何の感情もない人形だった。
そんな私に学校でまともに友達などできる訳もなく、もちろんのこといじめられた。
だけど、涙は出なかった。
壊れた私の心はもう悲鳴すら上げられなかったらしい。
そんな私を立ち直らせようと引き取ってくれた叔母が色々してくれた。
「泣いてもいいんだよ。」
そう言って私を包んでくれたが、やはり涙は出なかった。
それは多分心の中で、まだ現実を受け入れられなかったからだと思う。
だから私は今日ここに来た、別れを告げるために。
暖かい風が頬をくすぐる。
それを感じながら私はゆっくりと閉じていた目を開いた。
一文字に結んでいた口を緩め、真っ直ぐ沈む夕日を見つめた。
「さよなら、私。」
今の私に別れを告げるために。
「こんにちは、私」
そして、新しい私を手に入れるために。
私の物語はまだ始まったばかり。
だから進もうと思う、私の『未来(えがお)』を手に入れるために。
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