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そして彼が妹の変化を不思議に思ったまま、新たな妹の変化を感じさせたのはそれから3週間後の事だった。
『兄ちゃん、今…大丈夫?』
「ああ、珍しいな、自分から電話なんてさ」
『うん……ちょっと、ね…迷惑だった?』
「いや、大丈夫だ」
『……そっか…』
いつもより明るみが無いリムの声。
彼女が今いる場所が外なのか、ビシビシと雨水が地面を叩く音、そして風が吹く音が聞こえて消え入りそうな妹の声をかき消そうとする。
「で、どうしたんだ?」
『……ちょっと兄ちゃんの声、聞きたかったんだ。もしかしたら…"最後になるかもしれないし"』
「…………最後?最後って何だ?」
"最後"という二文字に、首を捻るツカサ。
だがリムはそんな彼の疑問に答えず、いつになく弱々しい声で話を続ける。
『兄ちゃん…これが最後じゃなかったら今晩、電話するよ』
「なあリム、お前…さっきから何を言ってんだ?」
『乙女の内緒だよ?じゃあ…また、ね』
―――ブツッ
「………リム?」
意味の分からぬまま電話を切られて混乱するツカサ。
ほんの一瞬、絶対にあってはならない想像をしてしまったがブンブンと頭を振って、想像した絵を追い払った。
そしてこの日の晩、深夜になっても通信端末からは一秒も音が鳴り響く事は無かった。
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