2つの決意、そして無力の罪

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『これが最後じゃなかったら今晩、電話するよ』 ――だが、リムがそう言った晩に電話は来なかった。 つまり、あの時に言った"これ"が最後だったのだ。 けれどその最後の意味が分からない。 心配になって次の日の夜、よくリムと電話で会話を交わす時間帯に電話を掛けたが、彼女が通信端末の電源を切っているのか一度も出ない。 あの時、電話越しに雨と風の音が聞こえたがその日の朝に見た天気予報には外部居住区全体の天候は快晴とあった。 だからリムは外部居住区からかなり離れた地で電話をしたという事が分かる。 フェンリルから家に連絡が来ていないという事からするとリムは死んでいないのは確実だろう。 ならば何故リムは電話をしない、又は出ないのか。 休む暇が無い程に仕事が忙しいのか。 もしくは彼女の身に死ではない、何かが遭ったのか。 リムから電話が来てから2日後、ツカサはその謎を解決すべくフェンリル極東支部へ行く事を決めた。
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