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あの癖っ毛の男が病室から出たという事は、彼はリムのお見舞いに行ったという事なのか。
だとするとリムはお見舞いに来た彼を不機嫌にさせたのかもしれない。
そう頭の中で推測して、病室に入ったらまず、妹を叱ってやろうと決め扉に視線を向けた。
だが――リムのお見舞いに病室へ来たのは、癖っ毛の男だけではなかった。
「……にしてもプリン味のレーションを箱買いして食べたいからって、先輩である俺とアイツに自室から持って来させるなんてお前も偉くなったなー」
「良いじゃん別にぃー。2人共、暇だったんでしょ?」
「………?」
呆れ混じりに言う男と、ブスッとふてくされた様に言い返す少女の声。
その少女の声には聞き覚えがあり、確実にリムの声だとツカサは一瞬で理解出来た。
そして、今すぐ入りたいという衝動を押さえて自動ドアが開かない程度の距離を保ち会話を聞く事にした。
リムの電話に出れない理由は知ったが、最後に電話で彼女が話した言葉の意味。
そして存在するかどうか不明ではあるが、人の死を喜ぶ様になったきっかけを探る為に。
「……で、話変えるけどその肩の傷、周りにはエントランスの階段から転がり落ちて出来たって言ってたけどそれって完っ全に真っ赤な嘘だろ?」
分かり切った様に言う男の質問に、リムの入院の原因は肩に負傷を負ったからだと知ったツカサ。
そしてリムの返答を含め、会話の続きを黙って待つ。
「なーんでそう思う?」
「いやだってさ、あの時の傷の出来方もだが全身びしょ濡れの泥だらけで、アナグラ内じゃ有り得ない汚れ方だろ」
びしょ濡れ
泥だらけ
その2つのキーワードと最後に妹と話した時に聞こえた雨と風の音を脳内で組み合わせた。
ツカサが答えを編み出すのには、そう時間は掛からなかった。
「アイツ…任務前に現地で俺に電話をした後に…任務でアラガミと戦って入院するほど肩に大きな怪我をして……そんで嘘を言いふらしたのか……?」
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