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それが本当ならば、リムはきっと周りの人間達に心配を掛けたくないから嘘を言いふらしたんだろう。
けれど何故、嘘を言う必要があるのか。
アラガミと戦って傷が出来たという事が恥ずかしいのだろうか。
でもリムはそこまでプライドは高くない。
仮にプライドが高かったとしても階段から転がり落ちたという方が本当の事を言うよりも恥ずかしいはずだ。
その謎を解く鍵である男とリムの会話の続きを、ツカサは待った。
だがリムは沈黙だけを続けていた。
彼女は他人に嘘がバレるか言いたくない事があると、笑い誤魔化すか口を閉じ沈黙を造る癖がある事は兄であるツカサは知っていた。
だからその癖が表れたという事は、ツカサの推測が的中した事を意味する。
しばらくするとリムのさっきまでの元気を削った弱々しい声が沈黙を破った。
「……あのさ、この事みんな気付いた?」
「それは分からないがお前の先輩のサクヤさん辺りは多分気付いてるぜ。怪我だけじゃない、お前が行った任務についても予想はついてるはずだ」
「………そっか…」
真剣さが伝わる男の言葉と今にも消え入りそうで臆病さが感じられるリムの言葉に、ツカサは分かった。
リムが隠そうとしたのは、怪我が出来た原因ではない。
怪我を負ってでもこなした任務の存在そのものである事を。
「ま、俺はお前が傷だらけでアナグラに帰って来る前にヒバリちゃんの可愛らしい心配そーな顔を見ただけでなんとなーーっく分かったけどな!!」
それは本当かと疑いを感じる自慢げな言い様にリムは何も言わなかった。
けど謎が全て解決したツカサはすぐにその場を離れた。
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