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分かった。
全部分かった。
今までのリムの不穏な言動の意味が。
雨の中で彼女がツカサに電話をしたのは、自分が今から戦う敵に殺されるかもしれないという事を兄に伝える一種の遺言。
入院中にツカサへ連絡出来なかったのは、病室内での通信端末の使用禁止されていたのか、又は怪我の事を隠し自分が言い広めた嘘を事実にねじ曲げようとしたのだろう。
最後に、ツカサが初めて違和感を抱いた人の死を喜ぶ事の原因は昔からある、リムの優しさだった。
あの時は笑って喜んではいたが、リンドウという人間はどうなったのかとツカサが聞いた時にリムは押し黙った。
病室でリムがお見舞いに来た男に嘘を言ったんだろうと言われて黙ったのと同じ様に、リムは元隊長の死を伝えたくなくて黙ったのだ。
他人とはいえども知っている人間が死んでしまえば彼女は悲しむ。
それに対してツカサが尋ねた事を謝った事により、申し訳ない気持ちになったリムは誤解され攻められるのを覚悟で、わざと悪い人間を演じた。
そして2日前、電話を終え、誰にも言えない任務をこなすべくアラガミと戦い入院する程の大怪我を負って、お見舞いに来た部下や他の部隊の人間達に心配を掛けまいと本当の事を隠し、ほぼ見え透いた嘘を言いふらした。
リムはこうして大事な人間達の為に必要以上の荷を背負って生き続けている。
隊長としての顔を保つ為に。
そして家族の為に――
ツカサは自分が知らぬ内に、妹に荷を持たせていたのだ。
このままでは、リムは抱えてきた荷の重さに押し潰されてしまう。
だから自分が妹に背負わせた荷は自分で背負わなければならない。
ツカサは決意した。
妹を守り、彼女の大切なモノを破壊し続ける神を喰らう、ゴッドイーターになる事を――
そして、彼女の盾になる事を――
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