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そしてその日の夕方、ミッションから帰って来たツカサは、一緒に組んだ2人と別れ、リムの部屋に向かった。
彼女は今日中に支部長に資料の提出をしなければならないと言っていた。
しかもまだ記入すら終えていないらしい。
リムは昔から勉強が大の苦手だ。
もしかすると未だ資料になんて書けばいいか分からず困っているかもしれない。
最悪の場合、現実逃避して資料を投げ出し、ゲームして遊んでいる恐れもある。
ツカサはリムの部屋の前に立つと、軽く扉をノックして部屋の中にいるであろう彼女に聞こえるぐらいの声量で声を掛けた。
「おーいリムー、資料の仕事終わったかー?」
「………」
扉の向こうから反応が無い。
資料に集中していて気付かないのかとツカサは首を傾げ、先程より一回り大きな声量で言った。
「リームー、部屋入っていいかー?」
「………」
またしても反応が無い。
ツカサはもっと大きな声で言おうと息を吸った、その瞬間だった。
―――ドタンッ
「~~~~っ…!!!!」
「………!?」
突然部屋から重い物が叩きつけられた様な鈍い音と声にならないリムの悲鳴に、一瞬でツカサの中の不安は膨れ上がる。
そして部屋の主の許可を得ずに迷う事無く部屋の扉を開けた。
「リム!!」
部屋に入ったが、一見してリムの姿は見当たらなかった。
だが、すぐそばから「兄ちゃん」とツカサの名を呼ぶか細い声が聞こえ、ツカサは素早くベッドの下を覗く。
するとそこには、ベッドと細長いテーブルの間の狭い隙間で赤子の様にうずくまるリムの姿があった。
「…に…ちゃ……」
「リム!!」
苦しそうに細めた目で自分を見つめるリムの細い肩を掴む。
するとリムは水を掛けられた猫の様にビクッと肩を大きく震わせ、小さく悲鳴を上げた。
彼女の額にはびっしりと汗が滲み出て、息がとても荒い。
何故リムがこの様な風になっているのか全く理解出来ないツカサは彼女を抱き上げ、ベッドに寝かせた。
そしてすぐに誰か助けを呼ぼうとベッドから離れようとする。
――が、そんな彼の服の裾を握る震えた手が、それを遮った。
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