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それから2週間後、リムは同じ部隊の部下を連れて雪が降り積もる廃寺院に向かったと、ツカサは他の部隊の人間から聞いた。
なんでもリム達が廃寺院に向かったのは、彼女達の元リーダーである雨宮リンドウの腕輪を回収する為だという。
「にしてもお前の妹、隊長になってから欲張りになったモンだよなぁ」
昼12時頃、食堂で偶然、席が隣になった独特な帽子の被り方をした赤茶色の短髪の青年――小川シュンはジャイアントトウモロコシのコーンが刺さったフォークをツカサに向けてぼやいた。
ツカサはキョトンとした表情でシュンを見る。
「……と、言いますと?」
「だーかーらー、お前の妹は隊長になってから欲張りになったっつってんだよ」
「そうですか?リムは趣味以外に欲は無いと思いますが…」
「それはゴッドイーターになる前だろ?アイツは隊長になってから変わったんだよ」
確かにリムは隊長になってから変わった。
それはツカサが神機使いになる前から知っている。
「最初の時のアイツはさー、よくコウタやカノンとか仲良い奴連れて報酬が少ないミッションに行ってたんだけど隊長になってからは高額のミッションを1人で行く様になったんだぞ。俺やコウタが親切に着いてってやるって言ってんのに断ってさ……ヒドいだろ?」
「ヒドい、ねぇ…」
高額のミッションは大抵新種や大型のアラガミなど、強敵を討伐するのが多い。
それをリムが自分1人でこなすのは心配だが、一種の成長を遂げた様にも思う。
けれど今思えばツカサが神機使いになってから約20日間、彼は一度もリムとミッションに行ってなかった。
ツカサは主に通常任務に出てたまに演習や講義を受けているだけだが、リムは隊長としての書類の提出や報告、そして通常任務がプラスされる。
だから彼女はツカサと違って、常に仕事に追われた日々をいつも過ごしている。
「まあリムには…リムなりの考えがあるんでしょう。俺達がとやかく言う権利は無いと思います」
「えー、もし隊長が妹じゃなかったらお前そんな事言えんのかよー?」
「さあ、分かりませんね。ところで思ったんですが……」
「ん、なんだ?」
「あなた誰ですか?」
「名も知らない奴と普通に飯食って話してたのかお前は」
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