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説教という名の拷問の夜が過ぎて2日後の朝、ツカサ及び第一部隊の一部の隊員にエントランス2階に集合するよう命令が下った。
もちろんツカサはそれに従った。
「おはようございます」
「あら、おはようツカサ」
ツカサの挨拶に、短く切りそろえられた艶のある黒髪と露出の多い派手な格好の女性――橘サクヤは、笑顔で挨拶を返す。
彼女の隣にいた色白な肌と蒼い双眼が特徴的な少女も「おはようございます」と、礼儀正しく挨拶をした。
「あの…今日なんで集まったか分かりますか?」
「私達もそれについて話してたけど…今日呼ばれた人の名前を見ると多分先日の件が関係していると思うわ」
「先日の件?」
先日と聞いて最初に思い浮かんだのは先輩2人が女王の前で正座している光景だが、それはツカサ以外の第一部隊の隊員は全く無関係だ。
他に何か無いのかと頭を凝らして考えているとエレベーターの自動ドアが開いた音がツカサの耳に入った。
「………おはよ」
如何にも不機嫌そうな表情を浮かべて2階にいるツカサを含めた部下達に挨拶をする隊長リム。
そんな彼女の後に無言でエレベーターから降りる藍色のフードを深く被った男。
「おはよう、リム。腰は大丈夫?」
「……っ…!!」
リムは何の唐突も無いサクヤの質問に一瞬目を見開く。
そして焦った様に答えた。
「は、はい!!お陰様ですっかり治りましたぁ!!」
「そう、それは良かったわ」
リムの対応に不自然さを感じる。
彼女の腰に関係する話など兄であるツカサの耳には入った覚えが無い。
「リム、何か遭ったのか?」
「あれ?ツカサさんリムから聞いてませんか?この前リム任務で――」
―――ガンッ
「なんでも無いよー!!なーんでも、無いからねー!!」
明らかに造られた事が分かる笑顔をツカサと蒼い双眼の少女に向けるリム。
ひび割れた手すりと赤く腫れたリムの右の拳が笑顔を向けられた2人を黙らせた。
サクヤが何か言おうとしたがその途端にエレベーターの自動ドアが開き、5人に集合をかけた本人が出て来た。
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