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「ツカサ、ちょっと話があるんだけどいいかしら?」
目的地まで空を飛ぶヘリの中、サクヤがツカサに話し掛けた。
真剣さと戸惑いが感じられる表情からすると、きっと任務の事だろうと思い、了承の意味を兼ねて腰をずらし隣に一人分座れるスペースを造った。
それにサクヤは安堵の笑みを浮かべてそこに腰を下ろす。
そして言った。
「ツカサはリムの事…どれぐらい知ってる?」
「………?」
"どれぐらい"と聞かれてなんと答えれば良いか分からずにツカサは困惑の表情を浮かべる。
するとそれに察したサクヤは口を開いた。
「じゃあ…リムが薬を飲んでいる事は知ってる?」
「薬?ああ、こないだアイツの部屋からカプセル錠のモノが見つかりましたね。栄養剤かダイエットサプリメントだと思いますけど……」
「そう…」
ツカサの答えにサクヤは顔を俯かせた。
彼女は違う答えを待っていたのかと一瞬だけ思ったが、彼には他に何も思いつかなかった。
「ならリムの自室…は見たわよね……腕は見た事ある?」
「腕…ですか…」
ツカサは頭の中で最近のリムの姿をいくつか思い浮かべる。
パーカーにミニスカート。
パジャマ。
ホルターにサイハイ。
いくつか思い浮かんだがどれも腕を隠した格好ばかりだ。
リムが神機使いになる前はTシャツや着物、時には下着姿と派手な姿を曝していた覚えはあるが彼が神機使いになってからは彼女の素の腕を見た覚えが無い。
「すいません、覚えてません」
「なんで謝るの?覚えてないならいいわ。変な事聞いてごめんなさいね」
「いえ…別に……」
「今回の任務、一緒に頑張りましょうね。お兄ちゃんが頑張ってやらないと参加出来なかったリムに申し訳無いわよ?」
突然話を切り替えたサクヤにツカサは取り敢えず「はい」とだけ返事を返した。
確かにあの様子だと、リムは腕輪の回収と腕輪の持ち主であるリンドウという人間の敵討ちをしたかったんだとツカサは思った。
しかしこの考えが的を大きく外している事など、今のツカサには知る由も無かった。
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