後悔という名の赤い現実

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3日後―― 「ツカサ、少しは寝た方が良いよ」 「大丈夫…大丈夫だ……」 ツカサは隣から言い寄る青年の言葉に従わず、廊下の壁に寄りかかったまま向かいのドアから視線を外さない。 そのドアには、【一般人・神機使い 入室禁止】と書かれた紙が貼り付けられている。 ツカサは神機使いだから目の前の部屋に入る事は許されない。 3日前、重傷を患った妹が眠る病室に、彼は入る事が出来ないのだ。 「とか余裕そうに言ったってさ、あれからリム、一回も目覚ましてないんだよ?それにここに立ってたって状況は変わらないんだし、部屋とかエントランスとかで待っていようよ!!」 「行きたいのなら君だけが行けば良いだろ」 「だーかーらー、ツカサもだってばーっ!!」 全く動こうとしないツカサをしつこく説得する黄色いニット帽を被った茶髪の青年――藤木コウタは、病室で眠る"リム"は勿論、ツカサの事をかなり心配していた。 何故ならツカサは、3日前のあの時からロクに睡眠時間をとらず、仕事以外の時間は仏像の様にずっと病室の前を立っていてほとんど体を休ませていないからだ。 だから彼の目の下にはくまが出来ていて、顔色が悪く、非常に苛立っていた。 それでもツカサは病室の前で"リム"が目を覚ます時を待ち続ける。 ―――ダンッ 「アイツは…リムは支部長の陰謀に巻き込まれて…そんで"クスリで体をおかしくさせられた"挙げ句…"腹に風穴空けられた"んだ…」 苛立ちの声を口から漏らし、自分自身に語りかけるかのようにブツブツと呟いた。 感情を全てぶつける様に鉄製の壁を殴った拳からは強い痛を感じ、指の骨にヒビが入ったかもしれないがツカサの表情は自分自身に向ける怒りだけを表している。 「"また"なんだよ…"また"守る事が出来なかったんだよ俺は…。アイツが裏で苦んでいる事に早く気付いてやれなくてさ、やっと気付いて"今度こそは"って思った時には……"また"アイツは……」 ツカサは頭の中で映像を流す。 妹を守ると決意を固めた時。 そして、自分が直接見たのにも関わらず、気付く事が出来なかった妹の苦しむ姿を―― .
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