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「そうじゃったのか。それならそうとはよ言えばよかろうに」
「言っ!!いや、じゃああの黄緑から聞かせてもらおうか」
「ロイドは知ってるんじゃったな。黄緑、エルトじゃが、あやつは生粋のアタッカータイプじゃ。魔武器は短剣じゃったか」
リリは椅子を前へ後ろへカタカタと揺らしながら説明する。
「短剣が魔武器なのか?」
短剣を補助じゃなく主として使うとか、どこの殺し屋だよ。
それともNO,3みたいなもんか?
「そうじゃ。じゃが短剣と言っても直接斬る為ではない。短剣に風を纏うたり風を操ったりするんじゃ。魔法の詠唱省略や効果増幅をする補助型の魔武器じゃな。じゃから本来は中距離型のはずなんじゃが、あやつは直ぐに突っ走って接近戦をしたがる」
戦い方は、まぁ見た目通りか。
魔武器を補助として使うのもまぁなくはない。
それにしても、
「詠唱省略ってのは無詠唱ってことか?それは強いな」
俺は元々詠唱がいらないからどうでもいいが、やっぱり長ったらしい呪文を詠唱しながら闘うのは見てて大変そうだ。
それをなくせるのは相当強い。
「いや、それは術者の技量による。あやつの技量では初級の無詠唱、中級の詠唱破棄、若しくは安定化がやっとじゃろうな」
「そんなもんか」
まぁ、これでも十分強いんだろうけど、あんまりピンと来ないな。
因に無詠唱とは何も声を発せず魔法を発動させられることで、詠唱破棄は呪文みたいなものは必要ないが魔法の名称を言う必要がある。
はっきり言ってチカラのインフレ状態である俺からしたら、戦い方には興味が湧いても強さにはあんまり興味が湧かないのだ。
これもチート能力を持つことによる弊害の一つだな。
舌の肥えた美食家が普通の飲食店では満足できないのと同じ様なものとでも思ってもらえればいい。
因みに本当に舌の肥えた美食家が普通の飲食店で満足できないのかどうかについては俺の知るところではない。
「お主からしたら魔法学園の生徒なんてこんなものじゃろう」
「だな」
リリもそんな俺の心中を察したのか苦笑いする。
「にゃー」
そんな話でリリと顔を見合わせているとどこからか猫の鳴き声が聞こえた。
「ん?」
リリは聞こえなかったようでキョトンとしている。
俺は窓の外に身を乗りだし外を確認する。
5m程下に黒猫がいた。
黒猫は座ったままこちらを見上げている。
「何じゃ?」
「いや、何でもない」
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